お父さん、実家のレストランの将来は僕に任せてください!
結果は永住権取得!だけではなく調理師の仕事が大好きになった大澤君

「大澤ですけど、吉田さんいますか?」という電話を受けた瞬間、なぜだか嬉しい予感がした。予想通り、昨日永住権が取得できました! と喜びの声をもらった。3 年前、大澤君がオフィスに来た時、さわやかでかっこいい少年だなというのが第一印象だった。それもそのはず、大澤君は日本でバリバリのテニス・コーチだったのだ。シドニーにはテニス留学も含めた大学進学が最初の目的だった。シドニーで仕事をして自分の力を試してみたいという気持ちが強くなってきた彼は、大学進学をひとまず休憩して新たな目標に向かって進み出したいとカウンセリングに来た。
人生の岐路ともいえる進路変更をする時には、長い期間をかけて悩む人がやはり多いが、大澤君は体育会系という彼のキャラなのか、カウンセリングをした後には既に決断していた。コース選びは偶然だったが、実家が4代にもわたる老舗のレストランを経営してるということで、調理師コースを選んだ。今でこそ調理師コースに日本人生徒も増えてきてるが、大澤君がスタートしたころにはまだ日本人の生徒が永住権申請のためのコースを目指す例は少なく、大澤君も決断したものの、不安もあったにちがいない。2 年の調理師コースのうち、1 年は実技が大半を占め、2 年目からは理論が中心となる。実際、大澤君本人にコースを振り返ってもらい、また2年間の生活についても聞いてみた。

実技の授業はどのように行われているの?

「実技は西洋料理から中華・日本・タイなどのアジア料理まですべて学びます。バッフェ・プロジェクトの課題が出たこともあります。決められた予算内でスタッフを配置し、決められた人数分の料理を時間内にアレンジするなどです」

調理師コースで楽しかったことは?

「実技も楽しかったんですが、僕は2 年目のレストラン・マネジメントが面白かったです。2 年目の理論の授業は確かにハードですが、実際に実技をやった経験がないとできない宿題もあり、理論とはいえ料理が好きじゃないと難しいのでは。実在のレストランを想定して求められる課題が多く、アルバイトをしてたレストランの方たちに協力してもらったことも多くあります」

つらかったことは?

「学校の授業はほとんどが朝からスタートしますよね。でもホスピタリティ業は夜が遅いことが多く、仕事との両立が一番大変でした」

学校で教わったメニューで一番難しかったのは?

「みんなに話すと笑われるんですが、クロワッサンです。僕が普段食べてるたった90 セントのクロワッサンを作るのが、こんなに難しいなんてー。それ以来クロワッサンを見る目が変わりました!(笑)」

学校の授業と現場どちらがためになりましたか?

「仕事場ではシェフはやり方を教えてはくれません。できて当然なんです。だから基本的なことは学校で教えてもらう。例えば現場で千切りのことをジュリアンといいますが、これは学校で教えてもらわなければわからず、それを知らずに現場に出るとシェフとのコミュニケイション不足によって仕事にも支障が出てきてしまいます。僕は両方とも必要だと思います」

料理の楽しさって何ですか?

「料理は自分の努力が形になって目に見える。例えばこの間までできなかったソースがうまくできるようになったとか、キッチンがオーガナイズできるようになったとかですね」

大澤君は努力家でポジティヴな考え方の持ち主だと思う。調理師として初心者だった彼はレストランではもちろん下積みからスタート。どんな仕事も明るい笑顔でこなしていく彼の姿が評価を得て、ポジションも上がっていった。スキル・コースだと心配される英語力の低下も、彼は英語コースから3 年間ずっとホームステイを続けた。最近ではホームステイは自由が少ないからという理由でシェアに変わる人が多い中、ホームステイの環境は自分の英語にとってすごくプラスになると言っていた。 大澤君という人間を言葉で表すと、“人なつっこい笑顔”と“決断の良さ”である。決めたことは前だけを向いて歩いて行く潔さがある。私のように後ろを振り返ってばかりいる小心者には彼の生き方には学ぶ点がたくさんあったように思う。将来の夢は、シドニーに来る前は全く考えもしなかった実家のレストランを継ぐことだという。今の彼の姿を一番喜んでいるのは彼の両親らしい。
彼がこのコースを目指す人に「初志貫徹」という言葉をくれた。2 年目の理論が始まると途中で挫折する人も多く、頑張った人にしか結果がこないということをぜひ伝えたいと。現在、大澤君はカフェで働いてるのだが、彼が得意とするカルボナーラがその店のスペシャル・メニューとなってるらしい。学生の時はよく実習の料理をオフィスに持ってきてくれた彼だが、今度はぜひ一人前のシェフになった彼の料理を味わってみたいと思う。このコラムを読んで大澤君がひょっこり料理を持ってくることを期待して…。

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