何年か前まで「若いのに会社経営して大変ですね!」などと周りのおじ様たちに言われてきた私も、最近では私のほうが「若いのに頑張っているねー」と声をかける側になってきたようだ。このコラムに登場してくれる人たちはもちろんのこと、写真はちょっと…ということで出てもらえない方の中にも皆さんにぜひ紹介したいと思う若い人たちが本当にたくさんいる。今回ご紹介するやよいさんは、弱冠24 歳にしてシドニーのとある日本食レストランの店長を任され、スタッフに慕われながら忙しい毎日を送っている。
やよいさんが初めてワーホリでシドニーに来たのは5年前。日本食レストランでアルバイトをスタートした。日本ではファスト・フード店で約4年、接客やキッチン全般のアルバイトをしていたものの、当初は本格的なシェフとしてのスタートではなかった。そのやよいさんを目覚めさせたのは、ホームステイ先でたびたび料理を振る舞っていたこと。毎回ホスト・ファミリーが本当に喜んでくれて、もともと接客業が好きだったやよいさんが「自分の料理をこんなに喜んでくれる人がいる。もっとたくさんの人に喜んでもらいたい」と本格的に料理の勉強をすることを決意した。
初めてシドニーに来た2001年の翌年には学生としてホスピタリティ・コースの勉強をスタート。TAFEを卒業したのが05年の12月で、06年、やよいさんは念願の永住権を取得した。TAFE ではフード・コストを計算しながらのメニュー作りなどの経営にかかわる内容を学ぶことができ、また接客業の心得を学んだことによって、以前と比べてプロとして接客業に携わることができるようになった。このことは店長として仕事をこなすやよいさんには直接良い影響を与えた。また、TAFEではオーストラリア人とともに勉強をするので、英語面でもまたオーストラリアでのサーヴの仕方を学ぶのにとても役に立ったという。そんなやよいさんに、TAFE で学んだことで印象深い授業について語ってもらった。
TAFE の授業はどのように進んでいくのですか?
「授業は材料の切り方やフランス語の専門用語を覚えることからスタートしました。栄養学の授業では、カロリー計算やヴィタミン等のバランスを考えながら、身体への影響も勉強します。苦労したのは日本であまり経験のないオーヴン料理です」
そうですよね。オーヴン料理は日本の一般家庭ではちょっと面倒臭いというイメージがありますね。
「オーヴン料理は和食とは異なり、調理の過程で調味料をあまり加えないことに驚きました。その代わりソースにハーブやスパイスを入れて味付けするので、ソースで料理の良し悪しが決まるくらい重要なんです」
TAFEで心に残る経験を教えてください。
「TAFE 内にあるレストランのキッチンで、実際に調理師としてゲストにサーヴする授業があるんです。スタッフは全員TAFE の学生で$25でコース・ディナーをゲストに提供します。予算内で独自のコース・メニューとア・ラ・カルト・メニューを考え、すべてにレシピ・カード(材料やコスト、調理法を記載したもの)を作成します。レストランで自分の考え出したコースがサーヴされる日は、自分は料理を行わずヘッド・シェフに徹し、ほかの学生に指示を出し監督する。ゲストからは直接感想がもらえ、シェフとしての実感もわくし、これが卒業後、即戦力として働ける実力と自信につながっていく、とてもいい授業スタイルだと思います」
これから調理師を目指す人に一言お願いします。
「調理師コースは真剣に取り組めば取り組むほど料理が好きに、そして自分の仕事が好きになれます。このコースを始める人の中にはいろいろな動機の方もいると思いますが、まずは料理が好きになることが一番大事だと思います」
やよいさんは現在の仕事ももちろんのこと、自分のスキル・アップのため自己啓発に常に取り組んでいる。RSAだけでなく、バリスタ・バー・スキルやカスタマー・スキルなどTAFE の授業以外にも積極的に参加して取得しており、今後もスキル・アップのために勉強を続けていくという。24歳のやよいさんが、いつか自分の理想とするレストラン作りの夢を叶える時、ぜひ、やよいさんのレストランに行ってみたいと思う。私も理想の会社作りを夢見て今日まで一歩一歩歩いてきたような気がする。やよいさんの働く姿を見て、もう一度会社をスタートしたころの初心の気持ちに戻って頑張ろう、と私自身が勇気付けられた。