梨紗さんが初めて海外の風に触れたのは、大学時代に行った2週間のホームステイ。そのころは英語がまだまだ話せなかったけれど、初めての異文化に触れ、今度は絶対長期で留学しようと決意したきっかけとなった。
留学した当初は日本語教師を目指し、1年間の語学留学をメルボルンでスタートさせた。
1年の語学留学が終了した後、大学院に進み、日本語教師のコースに進学する予定だった梨紗さんに転機が訪れたのは、オーストラリアン・カソリック大学での「大学の日本語コースでのTeachingアシスタント募集」という募集に応募したことだった。実践で人に教えることを経験した梨紗さんは、教えることの喜び、言葉だけではなく異文化を伝える喜びを身体で感じ、日本に帰国してから、日本人に英語を教えたいと考えるようになった。
現在梨紗さんはInternational House にてTESOL(英語教授法)コースを受講してるが、このコースは入学前に厳しいテストがあり、英語レベルによって4 週間、8週間と受講期間に差が出る。1年間しっかり英語の勉強をした梨紗さんは見事4週間でTESOLを取得できるコースに合格した。コースは上級者用ということで、クラスメートのほとんどはネイティブスピーカーだ。
驚いたことに入学日当日にいきなりTeaching Practiceがあり、いきなり実践からのスタートだった。ネイティブスピーカーの人と一緒に勉強をするということはかなり大変だと思い、その苦労を聞いてみると、意外な言葉が返ってきた。
「オーストラリアの人と違って、私は生徒として実際に英語の授業を受けた経験があります。だから生徒の気持ちがよく分かり、こうすれば生徒は英語を楽しく学べる、このようにするとつまらないということが自分自身分かってますので、それが強みですね。
授業の進め方も、生徒の心理状態を考えながら組み立てていけることは、外国語を学んだ経験が私にとってアドバンテージになってると思います」
クラスメートは皆先生を目指す人たちばかりなので、困ったことがあったりしても、みんなとても親切に教えてくれたり助けてくれるのだそうだ。梨紗さんもクラスメートも授業が終わってから一緒に復習や予習、またTeaching Practiceを午後7 時ごろまで一緒に勉強してるという。週末もレポート作りと忙しい毎日だが、その分留学してよかったという充実感がいっぱいだと明るく答えてくれた。
留学を経験してよかったと思ったのは、日本にいたら絶対に知り合うことができなかったであろう人たちと友達になれたことだという。そして留学を通して世界観が変わり、今までの人生の中で学ぶことが多い1 年であった。留学後は英会話教室で英語教師として働くことが夢だという梨紗さんは、「英語という言葉だけでなく、世界の異文化や背景なども伝えることができる教師になりたい」と帰国後の抱負を語ってくれた。
初めから目的を持って留学した梨紗さんなので、これから留学する人にはもちろん目的を持って留学することの素晴らしさも話してくれたが、そんな梨紗さんから一つアドバイスをもらった。「日本人の方は留学の目的にスピーキング力をつけたいと思う方が多いと思います。海外で暮らす時には、いろいろな国の人とシェアをして、たくさん話をするといいと思います。私もそれでかなり会話力がアップしたような気がします」
日本では大学卒業後、コーヒーショップで店長をしてた梨紗さんだが、留学が彼女のキャリアも価値観も変えて大きく成長したように感じる。日本では小学校から英語をという声も高まる中、英語教師の質が問われてるが、梨紗さんのようなスキルを持った日本人が日本で語学を教えることが、本当の国際貢献なのかもしれない。